農家の経営課題から生まれた
化石燃料にかわる冷暖房ハイブリットシステム
導入の背景
長崎県諫早市で農業を70年以上にわたり続けている宮下農園では冬場のハウス栽培に欠かせない暖房用燃料として、長年重油を使用してきました。しかし、重油価格は年々上昇を続け、農業経営における大きな負担となっていました。
その一方で、5年程前から、宮トマトのブランド化や直販の強化、新たな販路開拓など、付加価値を高める取り組みも進めてきました。ただどれだけ販売面で努力を重ねても、上がり続ける燃料費が利益を圧迫する状況は変わりませんでした。
「このままでは冬に栽培する意味そのものがなくなってしまう。」
そんな危機感から、数年前より重油に代わるエネルギーの検討を始めました。
農家として重視したのは、単に燃料を切り替えることではありません。導入コストを抑えながら、既存の重油温風機も活用でき、安定した暖房効果を得られること。そして、長期的に持続可能な仕組みであることでした。
電気を利用した設備や木質ペレットを利用する設備など様々な選択肢を比較・検討する中でたどり着いたのが、地域で発生する未利用木材を燃料とする薪ボイラーと蓄熱タンクを組み合わせたシステムでした。


なぜ薪ボイラーだったのか
重油価格の高騰を受け、宮下農園ではさまざまな暖房方式を検討しました。
その中で最終的に薪ボイラーを選んだ理由は、「燃料費」「導入コスト」「既存設備の活用」のバランスが最も優れていたからです。
暖房方式には、電気を利用した設備や木質ペレットを利用する設備など様々な選択肢があります。
しかし、新たな設備を導入する場合は多額の初期投資が必要となり、農業経営において大きな負担となることもあります。
また、設備によっては燃料や電気を継続的に購入する必要があり、エネルギー価格の影響を受けやすいという課題もあります。
一方、薪ボイラーは地域で発生する未利用木材を燃料として活用できるため、重油への依存を大きく減らすことができます。
さらに宮下農園では、既存の重油温風機をバックアップ設備としてそのまま活用できるシステムを構築しました。
暖房設備をすべて更新する必要がなく、導入コストを抑えながら大幅な燃料費削減を目指すことができたのです。
農家として目指したのは、
「できるだけ導入コストを抑えながら、最大限の効果を出すこと」
でした。
その結果として選んだのが、薪ボイラーと10トン蓄熱タンクを組み合わせた現在のシステムです。
蓄熱タンクを活用することで、日中に薪ボイラーで作った熱を蓄え、夜間はその熱を利用してハウスを暖房することが可能になりました。
また、寒波や機械トラブルなど万が一の場合には、既存の重油温風機を利用できるため、栽培リスクを抑えながら運用できる仕組みとなっています。
地域資源を活用しながら、既存設備も活かす。
それが宮下農園が薪ボイラーを選んだ最大の理由です。


導入してどうだったのか
薪ボイラーを導入すると聞くと、
「薪を切る手間が大変ではないか」
「夜中も薪を入れ続けなければならないのではないか」
と心配される方も少なくありません。
実際に宮下農園でも導入前は同じ不安がありました。
以前は冬場の暖房に重油を使用しており、寒い時期には50aのハウスで1か月あたり200万円近い燃料費がかかることもありました。重油価格の高騰は農業経営に大きな影響を与えていました。
薪ボイラー導入後は、薪割りや薪の運搬、夜間の薪投入作業が必要になりました。冬場は夜間に約5時間程度の管理作業を行っています。
しかし実際に運用してみると、その労力や人件費を考慮しても十分な費用対効果があることが分かりました。
宮下農園では薪ボイラーだけに頼るのではなく、既存の重油暖房設備もそのまま活用しています。
寒波や機械トラブルが発生した場合には、従来の重油温風機をバックアップとして使用できるため、作物へのリスクを抑えながら運用することが可能です。
また、暖房設備をすべて更新する必要がないため、導入コストを抑えながら省エネ化を進めることができました。

長崎県諫早市森山町宮下農園ハウス
30a 設定温度10度での実証結果(令和8年2月実測)
令和8年2月実測の結果
その結果、宮下農園では重油使用量を80%以上削減し、暖房コストの大幅な削減を実現しています。
薪割りや夜間作業という手間はありますが、それ以上の経済効果が得られることを実際の栽培現場で実証することができました。
現在では、燃料価格の変動に左右されにくい経営基盤づくりにつながり、持続可能な農業経営を支える重要な設備となっています。

未利用木材の有効活用
当農園では、地域事業者様より発生する未利用木材の提供を受け、薪ボイラーの燃料として活用しています。
実際に、1シーズン分の燃料を地域内の未利用木材で賄うことができました。
木材を排出する事業者様にとっても処分費用の削減につながり、利用する側にとっても燃料コストの抑制につながるため、地域資源を循環させる持続可能な仕組みとなっています。
「薪の確保が難しいのではないか」と心配される方もいらっしゃいますが、多くの地域では剪定木や製材端材などの未利用木材が有料で処分されています。
当農園では、長崎県内で未利用木材を供給できる事業者とのネットワークも確保しております。
導入地域に応じた燃料調達方法についてもご提案できますので、薪の確保について不安がある方もお気軽にご相談ください。
薪ボイラーは、未利用木材をエネルギーとして有効活用し、重油使用量の削減とCO₂排出量の低減に貢献する環境配慮型のシステムです。

夏の猛暑対策への挑戦
宮下農園が取り組んでいる課題は、冬場の暖房費削減だけではありません。
近年は夏の猛暑による影響も年々大きくなっており、ミニトマト栽培においても高温障害が大きな課題となっています。
特に夏に定植する苗は、高温によるストレスを受けやすく、受粉不良や花落ちが発生することで、その後の収量や品質に大きな影響を与えることがあります。
そこで宮下農園では、冬場の暖房システムとして導入した蓄熱タンクを活用し、夏場の温度低減にも取り組んでいます。
現在は地中に埋設した配管を蓄熱タンクへ接続し、地中の安定した温度を利用してタンク内の水温を下げる実証試験を行っています。
冬は薪ボイラーで温水を蓄える蓄熱タンクですが、夏は逆に地中熱を利用してタンク内を冷却し、その冷水を活用してハウス内へ冷たい空気を送る仕組みです。
これまでの試験運転では、ハウス内の温度環境改善につながる冷却効果が確認されており、苗への暑熱ストレス軽減にも期待が高まっています。
また、この取り組みは新たな大型設備を導入するのではなく、既存の蓄熱タンクや配管設備を活用していることも特徴です。
現在は実証段階ですが、本格的な猛暑シーズンを迎えるこの夏に、さらなる効果検証を進めています。
宮下農園では、冬は薪ボイラーによる省エネ暖房、夏は地中熱を利用した冷却という、一つのシステムを年間を通して活用できる仕組みづくりを進めています。
気候変動による影響が大きくなる中、冬の燃料費削減だけでなく、夏の猛暑対策にも挑戦しながら、安定した宮トマト栽培を目指しています。

農家の課題から生まれた「MAGS」

~宮下式 農業用冷暖房ハイブリットシステム MAGS(マグス)~
冬は薪ボイラーで熱をつくり、蓄熱タンクへ蓄える。
夏は地中の安定した温度を利用して蓄熱タンクを冷やし、その冷熱を活用する。
これまで別々に考えられていた「暖房」と「冷房」を一つの仕組みとして活用するために構築したのが、
宮下式 農業用冷暖房ハイブリッドシステム『MAGS(Miyashita Agricultural Green System)』です。
MAGSは、
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薪ボイラー
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地中熱
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蓄熱タンク
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ファンコイルユニット(FCU)
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既存の重油暖房設備
を組み合わせた農業用環境制御システムです。
特徴は、新たな高額設備へ全面的に切り替えるのではなく、既存設備を最大限活用しながら導入コストを抑えていることです。
農業経営では、どれだけ優れた設備であっても費用対効果が伴わなければ継続できません。
MAGSは農家である宮下農園が現場で実際に運用しながら改良を重ねてきたシステムであり、
「できるだけ導入コストを抑えながら、最大限の効果を出す」
という農家目線から生まれました。
現在は冬場において重油使用量80%以上削減を実現し、さらに夏場は地中熱を利用した実証試験によってハウス内温度を低下させる効果も確認し現在夏に向けて実証中です。
気候変動やエネルギー価格高騰が進むこれからの時代。
MAGSは、地域資源を活用しながら農業経営の安定化と持続可能な農業の実現を目指す、宮下農園独自の取り組みです。
MAGS
宮下式農業用冷暖房ハイブリッドシステム概要

MAGSの仕組み
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冬:薪ボイラーで温水を作り、蓄熱タンクに貯めてハウスを暖房
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夏:地中熱でタンクを冷やし、冷たい空気をハウスへ送風
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非常時:既存の重油暖房設備も利用可能
暖房と冷房を一つのシステムで実現した、宮下農園独自の農業用冷暖房システムです。
※現在、特許出願中のシステム

未利用木材

薪ボイラー室

加温タンク(夏:冷 却タンク)

薪ボイラー

ファンコイルユニット


MAGS導入サポートについて
宮下農園では、実際に運用している薪ボイラー・蓄熱タンク・地中熱を活用した農業用冷暖房システム「MAGS」の導入支援を行っています。
私たちは実際に農業経営の中でこのシステムを導入し、重油使用量80%以上削減を実現してきました。
その経験を活かし、設備導入だけでなく、運用方法まで含めてサポートしています。
例えば、
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タンク温度をどこまで上げるのか
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外気温に応じた蓄熱量の考え方
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夜間の薪投入時間の目安
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重油暖房との切り替えタイミング
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木材の確保方法
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より効率的な燃料削減方法
など、実際に運用してきた経験をもとにアドバイスを行います。
また、導入前には現地調査を実施し、
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薪ボイラーの設置スペース
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蓄熱タンク設置の可否
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配管ルート
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既存暖房設備との接続方法
などを確認し、それぞれの農場に合わせたご提案を行います。
設備を導入することが目的ではなく、
「重油使用量を減らし、経営の安定化につなげること」
を目標に、一緒に取り組んでいきます。
運用方法までサポート

私たちが前例のない挑戦を続けた理由
このシステムを検討し始めた当初、行政や関係機関へ相談を行いました。しかし当時は長崎県内に事例や実績がなく、「前例がないためサポートが難しい」という回答を受けました。
それでも、重油価格の高騰や農業経営の将来を考え、この取り組みを諦めることはできませんでした。
そこで私たちは、自ら情報収集を行い、様々な角度から検討を重ね、薪ボイラー・蓄熱タンク・地中熱を組み合わせた農業用冷暖房システム「MAGS」を実際に建設し、運用を開始しました。
現在では、重油使用量80%以上の削減を実現し、農業経営のコスト削減と環境負荷低減の両立に取り組んでいます。
私たちは、この取り組みが長崎県内における一つの実証事例となり、今後、同様のシステムを導入したい農業者の皆様が活用できる事業や助成制度が増え、導入しやすい環境づくりにつながればと考えています。
農業の未来のために、まずは自分たちが挑戦し、その経験を次の世代や地域の農業者へつなげていきたいと思っています。
薪ボイラーや地中熱利用、燃料削減に興味のある方は、視察や農園見学も受け付けております。実際の設備や運用状況をご覧いただきながら、ご質問やご相談にも対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
株式会社宮下農園
株式会社 MadderRed
宮下

薪ボイラー施設見学・ご相談希望の方
〒854-0203
長崎県諫早市森山町本村西昭和開3573
株式会社 宮下農園(ハウス視察場所)
070-8491-3064/ 0957-51-4768
薪ボイラー・蓄熱タンク・地中熱冷暖房システム「MAGS」の導入をご検討中の方につきまして対応しております。
※現在、個人の方からの農園や栽培についての視察受入れは行っておりませんのでご了承ください。
